共生的コミュニティ形成に向けて(なぜなにNPO vol.181)

7月号で「コミュニティ」と「アソシエーション」について独自の見解を書いたのだが、そもそも「コミュニティ」という言葉は、社会学の中で使われていた言葉であると書いた。
その社会学の研究者の長田攻一先生の言葉を今回は紹介したい。
まず、「コミュニティ」概念の基本的特質を、R.マッキーバーは、「共同の意志が全体として支援し承認する共同関心の複合体」と定義。
「共同性」、「地域性」、「自然発生性」、「包括性」などの特徴を備えた集団であり、その内部器官としてある特定の関心を充足するために人為的につくられる集団を「アソシエーション」と呼んだ。共同関心ないし生活欲求充足などが重視される。としている。
また、F.テンニースの「ゲマインシャフト」と「ゲゼルシャフト」は、人間の結合の型を、互いに愛し合い、親しみ合い、語り合う、人間の実在的ないし自然的な「本質意志」に基づく結びつきによる集団、互いに他者を自己の利益と目的のための手段とみなしたり、反対給付なしには何も与えないような「選択意志」に基づく結びつきの型である「アソシエーション」と区別した。
ドイツの資本主義の発達過程を背景として、商業社会をモデルに後者が前者を侵食する歴史的移行を理論的に示そうとした。
そして、現代社会での「コミュニティ」概念の使われ方の特徴として、社会学の観点からは、グローバル化、脱工業化(個人化、モビリティ化、地域への多様な異質性の浸透など)を前提に、個人の主体性と自律性、異質な人々の多様性が強調される一方、社会空間の多次元性(とくにネット空間の広がり)が人々の暮らしを変容させてきたことが指摘されている。
それらの傾向を背景に、ネット空間に象徴されるような社会空間の多次元化により、コミュニティ概念に「地域性」の意味合いが薄れてきている。人との結びつきの形態に注目すると、「生活の共同性」、「関心の包括性」などは強調されなくなっている。
「コミュニティ」は「自然発生性」、「アソシエーション」は「目的をもって人為的に構成される」という点にほぼ集約されるようになっている。
他方では、とくに「コミュニティ」概念は、結びつきの形態と質(自律的個人間の関係、寛容性、相互信頼性・友愛性など)、持続可能性、社会空間の多次元性(生活拠点としての地域、テーマ領域空間、ネット空間など)、会話や議論の目的に応じた諸指標で語られることによって、多様な内容のものが内包されつつ広義に幅広く使われるようになっている。
この後に、本来、「コミュニティ」は異質なものの集まりであり、その基本属性は「共生」であるという考え方は社会学者にはある。との見解を示唆いただいた。
「共生的コミュニティづくり」は、まちづくりの基本的な考え方と思っているが、「コミュニティ」の基本属性が「共生」であるとすれば、「共生型コミュニティの創出」というときの「創出」は、人為的に創り出すという意味ではなく、そのような「コミュニティ」が自然に生み出されるような社会的仕組み(その役割を担う複数の種類のアソシエーション)を整えるという意味でとらえるべき。と長田先生はおっしゃる。
勉強不足で理解が追い付いていないところも多々あるが、しっかりとらえ、身近な「コミュニティ」の中で実践していけたらと強く感じている。(て)