善意銀行という取り組み
※本記事は、「F-wave」(2025年9月号)に掲載されたコラム(なぜなにNPO vol.191)を引用・再編集したものです。
善意銀行とは?
善意銀行の歴史
日本には、善意銀行という取組がある。
第2次大戦後、戦前の日本の民間による社会福祉の取り組みは一変した。
1946年11月3日に公布され、翌1947年5月3日に施行された日本国憲法89条※1(公金支出・公的財産供用の禁止)を受け、1951年には、「社会福祉事業法」が制定され、社会福祉法人制度が誕生し、ボランティア活動や福祉教育の推進を図る民間の取り組みは始まった。
時を同じくして、現在の「全国社会福祉協議会」が「中央社会福祉協議会」として1951年に設立され現在に至っている。
ボランティア活動や福祉教育の推進を図る取り組みは、徐々に制度が創られてきた。
1962年には全国社会福祉協議会が「社会福祉協議会基本要項」を策定し、社会福祉協議会は、地域住民の意思と活動が反映される組織であるべきとされ、その活動は、行政の指導の下で行う活動ではなく、地域住民が主体となって行うことこそが、地域活動の原則であると述べている。
同時期に、徳島県と大分県で【善意銀行(ボランティア・ビューロー)】が動き出した。
善意銀行の意味と目的
「善意銀行」は、実際の銀行ではなく、「善意」(寄附やボランティア等の善意)を預かり、地域の福祉や支援を必要とする人々・施設へつなぐ社会福祉制度。
翌1963年に「善意銀行の運営と育成の注意点」が次のように発表されている。
運営と育成の注意点は4点あり、最後に目的が示されている。
・地域のボランティア活動の状況を考慮して、適正な地域範囲を設定する
・金品よりも技能や労力の預託と払出しに積極的に取り組む
・金銭の取り扱いには慎重かつ明朗な取り扱いをする
・金銭預託の一部を事業費に使用することは差し支えないが、運営費に類するものには使用しない
そして「目的は、社会福祉事業に対する住民の直接的参加を促進することです」とある。
この注意点と目的を今も守りながら、2025年現在、東京都・愛知県名古屋市・西尾市・熊本市・横浜市緑区などで、「善意銀行」が動いている。
神奈川県内で唯一活動を続けている横浜市緑区で、80代のボランティア活動を続けている方に「善意銀行を知っていますか」と伺った所、「知ってるよ。看板を見たことあるし、配分も受けたことがある。コロナの時は大変助かった。」と言っていました。

金銭や物品が寄付がされ、地域活動の財源に
2022年度の報告書には、年間132万円ほどの寄付と物品の寄付が掲載されている。
配分先には、広く社会福祉の領域の組織の名前がずらりと並び、地域活動の財源として活用されている様子を見ることができる。
古の取り組みが、日本における寄付の新しい文化を創り出すかもしれない。
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※1:憲法第89条
公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。
