NPO法が切り開いた新たな公共のかたち~市民の力で生まれた法律~
※本記事は、「F-wave」(2025年11月号)に掲載されたコラム(なぜなにNPO vol.192)を引用・再編集したものです。
NPO法とは
1998年に制定された「特定非営利活動促進法(NPO法)」は、市民が社会のために活動することを支えるためにつくられた法律です。
この法律の大きな特徴は、政府や官庁ではなく、超党派の国会議員たちによって提案・成立した「議員立法」であるという点です。
日本では行政主導で法律が作られることが多い中で、NPO法は市民の声を受けとめ、議員が主体的に動いたという意味で、市民社会の成熟を象徴する出来事となりました。
1990年代の日本では、バブル崩壊による経済不況や高齢化、環境問題など、行政や企業だけでは解決しきれない課題が増えていました。
そんな中、1995年の阪神・淡路大震災では130万人を超えるボランティアが被災地で活動し、市民の力が大きく注目されました。

しかし当時、ボランティア団体には法人格がなく、銀行口座を開いたり契約を結んだりすることが難しいという課題がありました。
市民が安心して社会活動を続けられる仕組みが必要だという声が高まったのです。
ところが、政府は市民主体の団体に法人格を与えることに慎重で、法案提出には至りませんでした。
そこで立ち上がったのが、超党派の国会議員たちです。
議員立法で成立
彼らは市民団体や研究者の意見を丁寧に聞き、「行政に頼らない市民社会の基盤をつくる」という共通の目的のもと、政治的な立場を超えて協力し、議員立法という形で法案をまとめ上げました。
NPO法には、市民の立場に寄り添った工夫がいくつも盛り込まれています。
たとえば、法人格の取得を「許可制」ではなく「認証制」としたことで、市民が比較的簡単にNPO法人を設立できるようになりました。
また、超党派による立案だったため、特定の政権や官庁の影響を受けにくく、中立的な制度として設計されています。
そして何より、現場の声を反映しながら政策が形づくられたことは、民主主義の新しいかたちを示しました。
NPO法が議員立法として生まれた意義は、単に制度を整えただけではなく、政治そのもののあり方を変えたことにあります。
市民の意見を政策に直接反映し、政党の枠を超えて協力し合う姿勢は、行政主導から市民主導へ向けた、新たな公共を体現したものといえるでしょう。
NPO法は日本の民主主義の成熟を示す象徴的な法律であり、制定から約30年を迎える今、その成果とこれからの課題を見つめ直す時期に来ています。
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