藤沢市市民活動推進センター 藤沢市市民活動プラザむつあい

vol.145 パーム油をめぐる話

 アブラヤシから採れる「パーム油」は世界で一番多く使われている植物油です。お菓子などの加工食品や、食器・洗濯・掃除用の洗剤やシャンプーにも使用されています。また、コンビニやスーパー、外食チェーン店などで提供されるフライドチキンやドーナツなどの揚げ油としては、広く使用されています。呼び名は、植物油・植物油脂・ショートニング・マーガリン・グリセリン・界面活性剤などと様々です。

 パーム油の優位性として第一に汎用性、つまり他の植物油に比べて、使い勝手がよいことが挙げられます。また、苗を植えれば、年間を通して収穫できる時期が約20年以上続くことから生産効率も高く、他の植物油の生産地との労働環境の違いから価格は比較的低いため、積極的に使用されています。原材料に「植物油脂」と表示され気づきにくいのですが、私たちはこの便利な油を日々摂取しています。

 しかしながら、パーム油の大量消費を賄う大量生産のために、生物の多様性を支えている広大な熱帯雨林が伐採されていることはあまり知られていません。アブラヤシの栽培に適した赤道下のマレーシアやインドネシアの熱帯雨林には、ゾウやオランウータンをはじめタフ多様な動植物が生きています。特に、インドネシアのパーム油の生産量は、2000年に比べ3倍以上となり今でも上昇を続けています。パーム油生産のため、自然の熱帯雨林は、広大なアブラヤシのプランテーションに変わり、動植物は生きる場を奪われ、生物の多様性は失われていきます。また、熱帯雨林破壊だけでなく、家裁や泥炭地開発がもたらす気候変動への影響、開発に伴う先住民族との問題や農園で働く児童を含む労働者の人権侵害等々、パーム油の生産に関わる問題はどれも深刻なものばかりです。

 パーム油については、2004年「持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)」が設立されました。アブラヤシ農園、流通業者、消費財メーカー、小売業、投資家、環境NGOなど7つのセクターが参加し8つの基準と39の基準」を定め、認証油制度が始まっています。日本でも2019年4月に、小売、消費財メーカー、NGOなど18社/団体は、パーム油生産における環境面などさまざまな問題を解決することを目指し、日本市場における持続可能なパーム油の調達と消費を加速させるため、「持続可能なパーム油ネットワーク(JaSPON ジャスポン)」を設立しました。

 熱帯雨林は、「地球の肺」と言われ、酸素供給、炭素固定では大きな役割を果たしています。ほかにも、保水機能、薬用植物など森の資源、野生動物の住処など、計り知れない価値を持っています。一方で、パーム油は全世界70億人の命を支える資源の一つです。熱帯雨林がある国の人々だけの課題ではないことを理解し、自分たちの暮らしを見直す時期が来ています。2030年のSDGsの達成に向け、世界で起こっていることをまずは「知ること」「調べること」から始めましょう。(て)