vol.135 NPO は信頼できるのか
特定非営利活動促進法(NPO法)が施行されて、20年が経ちました。法の制定当時、特定非営利活動法人(NPO法人)数は2万程度と予想されていましたが、5万以上が誕生し、現在も設立は続いています。このことは、多種多様な社会課題の解決といった公益性の高い事業の担い手として、NPOの役割が一定程度日本社会に受け入れられつつあると考えることができます。しかしながら、ボランティア活動をはじめとする社会貢献活動への国民の意識が63%程度※1ある一方で、NPOへの興味関心は38%※2に留まっている現状があります。NPOとして活動している組織の市民参加への意識や、社会へのアプローチ力の低下が要因の一つと考えられます。NPOへの不信感を抱く一定数の市民が存在するのです。つまり、NPOと名乗っていても、全面的に信頼できるとは限らないことを多くの市民は20年間で学習してきたといえるでしょう。
では、どのようにしたら信頼を回復できるのでしょうか。2004年に発表された「信頼されるNPOの7つの条件」を紹介します。これは、NPOを支援する全国各地のNPOに所属するメンバーが議論を重ね作成したもので、最も大切とされていたことは、①NPOは、まずそのサービスの受益者から信頼されなければならない。②そのNPOを応援する支援者からの信頼も欠かせない。③それらを含む社会全体からの信頼が必要。この三者の信頼を得たとき、それが「NPOらしいNPO」なのだと言えると結論を出し、条件を考えました。
1.明確なミッションを持って、継続的な事業展開をしていること
2.特定の経営資源のみに依存せず、財政面で自立していること
3.事業計画・予算の意思決定において自律性を堅持していること
4.事業報告・会計報告などの情報を積極的に公開していること
5.組織が市民に開かれており、その支持と参加を集めていること
6.最低限の事務局体制が整備されていること
7.新しい仕組みや社会的な価値を生み出すメッセージを発信していること
いかがでしょう。受益者・支援者・社会全体の信頼を得る条件は揃っているでしょうか。NPOは、NPO自身も取り巻くステークホルダーも、全てが市民です。上記条件を満たし、状況をわかりやすく継続的に情報開示することにより、小さな信頼の芽が芽吹きます。信頼の芽は手入れを怠ると直ぐに枯れてしまいます。コロナ禍の影響で活動のスピードが緩やかになった組織も多いと思いますが、ピンチはチャンスと捉え、自組織の信頼の芽の成長具合をチェックしてみる時間をとってみませんか。(て)
※1 2019年度「社会意識に関する世論調査」(内閣府)
※2 2019年度「市民の社会貢献に関する実態調査」(内閣府)