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バングラデシュとネパールの女性たちによる石けんづくり

 

※本記事は、「F-wave」(2022年7月号)に掲載されたコラム(なぜなにNPO vol.156)を引用・再編集したものです。

試行錯誤のうえたどり着いた、石けんづくり

今回の特集記事を読んでいて、2015年の夏に出会った、天然石けんづくりに挑戦したバングラデシュとネパールの女性たちのプロジェクトを思い出しました。

彼女たちは、一家を支える収入を得る必要がありながら、現金収入がほとんどない状況下で試行錯誤し、南アジアに古来から伝わるアーユルヴェーダ(インド大陸の伝統的医学)で使用されてきた自然素材を使った天然石けんづくりにたどり着きました。

しかしながら、立ち上げた工房で生産された天然素材石けんは、独学で学んだ手法で生産していたため、品質のばらつきや虫などの不純物の混入などがあり、生産コストに見合った収入にならないことや、そもそも買い手がつかないという事態に陥っていました。

その状況を知ったフェアトレード商品を多く扱っている日本のNGOであるシャプラニールは、日本で販売をするためのプロジェクトを立ち上げ、本格的に価値ある商品の開発に取り掛かることにしました。

太陽油脂のサポートも受け、販路が拡大

まずは品質と安全性の確保のために、天然石けんの生産では70年余の実績を持ち、国内屈指の老舗企業の一つである太陽油脂株式会社に相談しました。

その後現地に行った太陽油脂の担当者は、「石けんづくりはシンプルで、基本的な作り方は世界共通。生産工程と生産環境の改善と維持ができればきっと良質な製品ができる。」と言ったそうです。

そこから現地の石けんづくりプロジェクトは大きく動き出します。

現地では、工程管理や生産工房の環境整備等、細部にわたり具体的なアドバイスをし、帰国後も関係資料を現地に届けたそうです。

的確なサポートを受け、彼女たちの意識の高まりと比例して、品質の向上と安定は徐々に高まり、販路の確保につながりました。

彼女たちの石けんは「She」というブランド名で、現地の飲食店やホテルなどで扱われるほか、日本でも販売が始まりました

さらに、オーストラリアやアメリカ、スウェーデンにも取引が拡大していき、生産者である彼女たちの収入も確実に生活を支える収入に近づいてきました。

そして何よりも大きかったのは、自分たち自身に自信を持つことができ、家庭やコミュニティでの地位の向上も見られ、人生が変わったことではないかと思うのです。

残念ながら生産者と逢うことはできませんでしたが、このプロジェクトを支えた皆さんは、口をそろえて彼女たちの向上心と粘り強さに感銘を受けていました。

さらに支えた皆さんの緩やかな関係性も築かれており、100%天然素材の石けんという共通価値を通じた地球規模の卓越した協働事業を目の当たりにした瞬間を今でも忘れることはできません。

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